神と仏と…
先日、第18回ヘルシー・ソサエティ賞を頂きました。
この賞は、より明るい今日とより良い明日に向けて、健全な社会と地域社会、そして国民のクオリティ・オブ・ライフの向上に貢献した人々を称える目的で、公益社団法人日本看護協会とジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループによって2004年に創設されたものであります。
ただの手術人にとりましては、臨床成果と生き様だけで評価されたこと、大変有り難く、“何だかとっても申し訳ないな”とただただ恐縮したのでございまして、これもあれも、皆々さま、神さま、仏さま、喪黒福造さまのおかげと感謝申し上げます。
今回は、3年ぶりの対面での授賞式となりました。
絢爛豪華なる会場、送り迎えのリクライニングシート付きハイヤー、左胸の真紅の薔薇、こだわりの“ありえん”デザート完食などなど…、今思い起こせば、あたかも突然にスマホ圏外&コンビニの無い世界へ放り込まれたような、“まさかや”慣れないことの数々、恥ずかしきことの数々でございました。会場内のSPの多さ、そして、コロナ対策のシビアさにはまっこと“チムドンドン”した次第です。
そんな中での、小生の受賞記念スピーチをお示しします。
『榊原記念病院の高橋でございます。第18回ヘルシー・ソサエティ賞、頂きました。
この賞は、今まで一緒に、時を積み重ねてまいりました多くの子どもたち、親御さん、そして小児循環器医療従事者のものと考えます。本当に嬉しく思っております。有難うございました。
さて、その小児循環器医療ですが、現在では、胎児期に始まりまして、その子どもが一生を全うするまでお付き合いするものであります。
今まで多くの心臓手術を行ってまいりました。
つまり、子どもたちだけでなく、親御さん、そして一緒に働く仲間たちから、沢山のご縁を頂いてきたことになります。
本当に幸せなことだと思います。
しかしながらその一方で、ご縁が深くなればなるほど、また医療が進歩すればするほど、正直辛いことも増えてまいりまして、
外科医ってけっこう弱いのですね、そういう時は、ついつい誰かにヒントを求めてしまいます。
その中には、僧侶の方、神職さんもいらっしゃいます。どうしてもそのような方々のお友達が増えてしまうのです。
実を申しますと、今回、私をご推薦頂いた中のお二方がそうなのであります。
最近富に思いますに、
そういった方々のお言葉ってものは、比重が大きいといいますか、もちろん多少は鬱陶しいこともございますが、でも、かなり重い…。
例えば、「心配するな」とか、「大丈夫」、「もっと頑張れ」というような、非常にシンプルな言葉でも何故か琴線に触れてしまいますし、
また、聞いた時にはすぐに理解できなくても、いずれなんとなく、次第にくっきりと分かるようになる、
結果、明日からの日常の手術にすんなりと突入することができますし、加えて、仲間内においてもそれぞれのご縁がもっともっと太くなっていく、
全くもって…、実に不思議なことです。
改めて私自身の今までを振り返ってみますと、何だか、その繰り返しで生きてきた気が致しますし、
そしてそう感じる度ごとに、「ああ、またご縁を頂いたな」と、懲りずに強く思うのであります。
しかしながら考えてみますと、そういった「言葉だけでご縁が成り立つ」ということ、
このことは、実は私ども医療者にとりましては、最も大事にしなければならないことであろうと思います。
できますれば今後、子どもたちに対しても、親御さんにも、そして仲間たちに対しても、
僭越ではございますが、今度はこちらから、そのようなご縁を、「もっと醸すことができれば」と思いますし、
特に、子どもの治療を行っていく後輩の外科医たちには、そのようなご縁によって、「それぞれの学びというものをもっと楽にさせることができれば」と願っております。
ご縁だけで生きてきた外科医の戯言ではございますが、
またこれから、いつまでも、そういったご縁というものが始まっていくのだと期待しております。
本日はヘルシーソサイエティ賞を頂き、有難うございました。心より感謝申し上げます。』
改めて申し上げることではありませんが、読者の皆さまから頂いたご質問の中にございました、たった一つの最大の関心事、“賞金の使い道”に関しましては、「○○団体に全額寄付する」というお答えを準備してはいたものの、当院のハートウォーミング賞と同様に全くもって『ご縁』がございませんでしたので、ご返答は控えさせて頂きたいと思います(当ブログ“ハートウォーミング賞”参照)。従いまして、過分なご心配や無理難題なご期待とご要望、そしていつものご同情は、すべからく、かつお約束どおり、生まれ持った星屑のもと、ことごとくご無用に御ん願い申し上げます。
さて今回の授賞式、ご来賓の皆さま、ヘルシー・ソサエティ賞の関係者の方々、また、制作と広報でお付き合いさせて頂いたエデルマン・ジャパンの方々に、これまた大きな『ご縁』を頂くことになりました。大変貴重な経験をさせて頂き、感謝申し上げます。一夜限りのスーパースター、まさにそのような気分でありましたが、煽てすかされた外科医ほど木に登る存在はないのかもしれません。それに伴いましてついつい、当ブログは今後、多少の高級ハイソ志向を目指したいと不退転の決意が沸沸と巻き起こってきたのでございます。そうそれは帰りのハイヤーの中のことでありました。実際に即即、翌日からさっそく行動を起こしてみたのです。…がしかしながら、そこは如何せん飽きやすさ魂の真骨頂…、毎度お馴染みの刹那的妄想な訳でございまして、賞を頂いたからといって、培ってきたブログカラーをすぐに変更するのは、読者の皆さまに頂いた今までの『ご縁』を無視する大変失礼なこと、などと言い訳を考えつつ…、また、エデルマンの約数名の方々(おそらく岩手県出身者1名含む)には、この小児心臓外科医のブログ、多少の人気(嘲笑)を博しているとのことでありますので、その『ご縁』の裏切りは漢として如何なものか、などと適当に考えながら…、従いまして、今回も無駄に少々ハッチャケの文章、いつものように書き上げてみた訳でございます。「取り敢えずまずは笑いを確保せよ」、「スベリは外科医一生の恥ならず」、「ウケは真摯に狙うべし」という高橋家門外不出の家訓は、武士の末裔として頑なに守らねばならないのであります。誠に僭越ながら今後も、相変わらずの懲りない腕白小児心臓外科医の文調、平にご容赦おん願いたてまつり候と、本日6月10日、天赦日に祈ったのでありました。
「独特な物言いで物議を醸す外科医」、お台場地区を中心にそう言われたのは随分と昔のこと…。でもそんなブログが話題になるのも、ヘルシー・ソサエティ賞を頂いたのも、すべては読者の皆さまからの温かき『ご縁』あってこそ、さてさて、それではユルリとスローライフ、これからも自分の殻を突き破ってまいりましょう。
皆さまのおっきな『LOVEご縁💗』、末永く賜れば幸甚です。