手術室 その三 相性
「あの音楽は…?」
小生のこの質問に対し、‘’ヤツ‘’はこう言ってのけたのです。
『うん? 😊 やっぱ分かる⤴
最近は邦楽ばかり流してるが、でも今の流行りのモンじゃない…。あれは昭和のシティポップさ。今日は、お前が来るっていうから、特別に胸を熱くする曲を準備したけどね。
しかし普通だったら、そんなモンが手術に合うのかって思うよな。単なる年寄りの我儘かも、単なる若手の忖度かもって、そう思うよな。でもところがどっこい、そうでもないんだ。
昔といえば昔の曲だけどさ、違和感無いだろう。なんかいい雰囲気だと思わないか?
いつの間にかのことだけどな…、フト気づいたら、このチームで市民権を得ていたのさ。もちろん最初は、片耳立ててのVol 13だったけどな、今じゃあダンボ耳…、20で流してるよ。
でもそうだな…、もし、もしもだよ、
そんな自然なことから『相性』ってものが生まれるのであれば、「手術にはコミュニケーションが大事、みんな仲良くしましょうね」なんて、声高に叫ぶ必要もないのにな。
ところで、話しは変わるけどな。
世の中には、人間関係を含めて、とことん合わないものがあるよな。しかし、俺たち外科医は、その「合わない」ことが‘’究極‘’という範疇を超えなければ、とことん合わせていくことができる。良くいえば柔軟性、悪くいえばポリシーの無さってもんだが、でも決して、シティポップと手術を無理くり合わせているんじゃないんだな。
しかも、実に不思議なことなんだが、それらの曲は現代風にアレンジされたものではないし、もちろんカバーでもない…、昔のまんま、オリジナルなんだ。イイものはやっぱイイ、だから合うのだろうよ。
オリジナルって本当に強い…、今まで何度、人生の転機というギフトを与えたのだろうか。
それで、もしお前さんがさ、今日の手術を評価してくれたのであれば、
流れる音楽は手術室に溶け込んでいるということ…、スタッフもまた、自然と手術に集中そして執着している、つまり溶け込んでいるということ、
そうだな…、そこが肝心でね。執刀医は、何よりもまず、そういった環境をとっても大切にすべきと思うんだ。少なくともそんな手術室では、人間関係の問題は起こらないからな。
昭和シティポップは実に不思議…、この季節は、達郎、詠一、妙子、オメガトライブあたりでいこうと思っている。
ああそうそう、そういえば、お前のところも音楽かけてたよな。確か70、80年代の洋楽だったか?(当ブログ 手術と音楽 参照)
大きなお世話だと思うが、もうそろそろ、邦楽が作るホンマモンのグルーブ感を、日本人として理解すべきじゃないか。』
♨
あたかも、贋作家が本物になりすましたようなこの発言…、昔、四文字熟語を問われて「焼肉定食」と答えたお前が言うなと思いつつ、思わず仰け反ってしまったのでありました。
どうやら、‘’ヤツ‘’の精神年齢は、羨ましくも、一年という時を待たずに整数値で下がり続けているようであります。彼の計算法に小数点は無いのです。
続きます。