Doctor Blog

コラム

おせっかいな本棚 序章

読者の皆さん、今回は7回に分けてのお話しです。
何と「無駄」なことをと思われるかもしれませんが、そこは推して知るべし「無駄話」、外科医の呪縛から解き放たれること、間違いありません。どうかご辛抱のほどよろしくお願いいたします。

 

あるお金持ち筋、医学とは無縁の古い知人からの手紙です。
『ご無沙汰です。…略…。
貴兄が心臓外科として相も変わらず○○な生活をしていることは承知しておりました。
いつだったか、議論したことを覚えていますか? “医師という職業、中々家にも帰れない、責任多く休みも取れずペイ少ない、そんなものを選択したことはかなり理解不可能…、長続きしないと…。”

…略…

 

しかし、まあ、映像の力は大したものです。テレビ拝見しまして、心臓外科医という存在には未だに引っかかるものがありますが、不思議に、時を超えた清涼感ある光を醸し出していること、
また、一つ一つの手術が、大人達それぞれの祈りと感動を、そして、子ども達それぞれの喜びと運命を生み出すこと、今更ながら感じ入りました。
まあこれも命かける職業の一つかと、少しですが見直した次第です。また、他の人たちよりも少しだけ楽に仕事をこなしているようで、これもまた安堵いたしました。
でも、もうそろそろ健康に留意した生活様式を考えて下さい。未だに、炒飯・ラーメンセットばかり喰ってんじゃないでしょうね?
従って、大きなお世話ですが、これ以上の健闘は祈りません。

…略…        …… 』

 

改めて言うことではありません。また、もちろん医師に限ったことではありません。
特に人を相手にする職業では、誰もが相手を察しようとする心気を持っています。それは恐らく生まれながらであり、少しずつお互いに交差し合う、高尚な何かへと変容していくものと推察します。その積み重ねが日本固有の一つの美徳なのでしょう。しかし、敢えてそれを口に出すこと、日本人にはどうも不得手のようです。

 

たまたま出版した本、たまたま出演したテレビ、随分と不慣れな経験を致しましたが、
今までお会いしたことの無い方々を含めて、これはこれで他生のご縁を生み出したのかもしれません。
常日頃から背負っている、思い悩みや惰性からでさえも生まれる喜怒哀楽、それらを人間らしくさらけ出すことは、良い意味でも悪い意味でもこれはこれで、それを目にした人の心を少しだけ優しくさせるのかもしれません。
そう思えること、“全き”幸福だと思います。

 

さてさて、読者の皆さん、絶対に口外して欲しくないのですが(…ある筋には特に内密のお話しです…)、榊原記念病院の図書室、その隅っこに、小生の本棚を作っていただきました。
榊原記念病院での“半生”と、一部から突っ込まれる“反省”の歴史を並べました。(…謂わば小生の恥部ともいえるものです)
今回は、自戒の念にかられながらも、この本棚の詳細についてお話しを進めていきたいと思います。
人の迷惑顧みず、大きなお世話をより大きく、「おせっかいな本棚」と命名(迷々)しました。

続きます。

※ 結構なお値段いたしました。