俵尊 その四
肺疾患
まずは結核です。結核は数千年前から人類を苦しめてきた疾患であり、紀元前4~5000年前のエジプトでは、一般的な病気であったことが確認されています。特に栄養不良が当たり前の時代では、いわゆる小児結核の子どもが相当多かったと考えられます。症状としては、繰り返す咳や発熱です。
また、次に、「タタラ」という名の如く、俵尊は製鉄の要職にあったと考えます。鉄器およびその製鉄方法は大陸からの輸入ものですが、前述したように、天岩戸開きの際には鉄から鏡を作る製鉄方法が既に確立されていました。しかも、俵尊は、猿田彦大神と鈿女の尊の出会いの後に生まれています。
ということは、俵尊の出生時には日之影町近辺で製鉄が盛んに行われていたのでしょう。そうすると、考えられる疾患は、製鉄作業による肺合併症の鉄粉肺症です。これは、金属鉄や酸化鉄の粉塵を吸入したために生じる呼吸器疾患で、呼吸困難などの症状が起こります。また、この粉塵吸入が原因で肺胞内に蛋白様物質が蓄積する肺胞蛋白症も考えられます。この疾患では酸素と二酸化炭素の交換が不良となり、血中酸素の低下から息切れや呼吸困難、感染しやすいという症状を呈します。
さらに、先天性肺疾患ということであれば、肺に嚢胞という袋状の病変が生じる嚢胞性肺疾患があり、これも肺炎を繰り返します。また、肺動脈の血圧が高くなる肺高血圧症、これは肺への血液循環が低下することで血中の酸素が低下して息切れや呼吸困難、動悸、右心不全といった症状を呈します。
以上より、これらの肺疾患は、当時の人々が「この子は病弱である」と感じることのできる症状を呈します。
次回は、心疾患について考察します。
続きます。
岩井川神社 参道石段です。ここで撮影しました。
※普段から、ふざけたブログ内容でその度ごとに叱咤激励を頂く小生ですが、真面目な講義調の内容となりますと、かえって「外科医らしくない」と“逆叱咤”を受けております。どうも真面目ですみません。もう少しだけお付き合い下さい。