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コラム

63歳還暦オーバー医師 学位取得に挑戦する 番外編

ちょっとだけ失礼します。
 
“500例の小児心臓手術”編も佳境に入ってまいりました。かなりの “ボヤキ一人漫才” で少し飽きられたのではないかと推測しておりますので、またもや早くも少し脱線したいと思います。
 
前回の “学位挑戦記” に対しては多くのご意見を頂きました。中にはご丁寧なお手紙まで頂戴しています。誠に有難うございました。この年になってのふざけた内容に対してお叱りのご意見は少なく(実はありました)、少し安堵した次第です(もっともっとはっちゃけてくださいとのご意見もありました)。
 
その中で、当院外科医の似顔絵につきましては、当院関係者、患児のお母さん方、そして手術マニアの方々、さらに昔の飲み仲間を中心に、“高橋の絵は上手い”、 “なかなかツボを得ている”、 “絵ごころがある” と好評でした(笑いだけは取りました、もちろん失笑もです)。
 
しかし、似顔絵の作者は小生ではありません。拙著でも書きましたように、画才は全くもってございません。でも幼いころは多少の才能をひけらかしたこともありました。幼稚園の頃に描いた東京タワーの絵が、なんと延岡市のコンクールで表彰を受けるという快挙を果たしました。当然、当時は実物も見たこともなかったのですが…。野口記念館の展示室に掛けられた燦然と輝く拙画の思い出が残っています。
 
“絵” でさらに思い出しました。小生の手術記録のことです。“専門医や指導医” などの心臓外科医としての資格の獲得には、論文の作成や学会発表の回数だけでなく、今まで行った手術数も必須の審査条件となります。従って、学会へ送る審査書類には、参加した手術記録のコピーも添付しなくてはなりません。当然、弟子たちの申請には小生の手術記録もくっ付いていくことになります。そして審査を受けるのです。
 
小生の手術記録に関して、審査委員の方々からは、“あまりにもシンプルな手術イラスト”、 “あまりにも解読難解な文字”、との極めて暖かいご批評を頂いたようです(後で聞いた話です…)。それこそ手術マニアにはかなりの話題となった有名な手術記録です。
でも、絵の下手さはどうでもいいんです。どうせ画才などありませんから……。しかし、こう見えても、幼い頃からの習い事の賜物でしょうか、書道は2段、なんと段持ちなのです。ですから、判読不可能な文字という評価はなんかちょっと不愉快でした(当時、周りからは前衛書道なんてことを言われていましたけど…)。
確かに、最近、自分で書いた文字が判読できないということに気づく自分がいることも事実です。上手く書けないのは漢字だけではないようです。やはり老化でしょうか。書道2段が書く手術記録というものも、それはそれで多少の問題がもともとあるのかもしれません。
 
いまさらながら言い訳をしましょう。もちろん画才については既に諦めています。しかし、“小生の過去の手術記録のイラスト”、小生が見ますとその時の手術手技の詳細や雰囲気、また苦労した感覚などが、ありありとよみがえります。さらに、段階的な手術が必要な場合には次の手術で注意すべき点も、ありありと妄想を持って頭に浮かびます。録画した手術ビデオを見るよりも、次回の手術の成否に直結するための小生にとっては、大事な大事な商売道具なのです。
 
写真とビデオには心がありません。小生の手術絵には “心と魂、そして妄想” があります。この絵から “何が得られるか” が大事なのです(多分にエクスキューズですが、もう少しお付き合いください)。手術の絵(イラスト)は残念ですけれども他人を感動させません。けれども、患児にとっては極めて有用な情報となります。他の意義を付け足して批評してはいけません。執刀医自分が楽しみ懐かしみ、そして感激するためのものなのです(段々としつこくなります)。
 
やはり、書道2段が書いた “絵” だから良いのです(このあたりは、なんでも鑑定団を再放送まで見続けたことがなんとなく役にたっているようです)。その内、ゴッホのように価値が上がるかもしれません。7000枚ほどありますので、いくらになるか今から楽しみです。期待しすぎて “妄想爆発爺” となっています。
 
実を言いますと、絵画は好きです。特に “青木 繁” の絵は幼い頃から今も好きで、全国の美術館を駆け巡りました。倉敷の大原や久留米の石橋、栃木、博多などなど、途中で地震が発生して帰京できなかったこともあります。最近では “村山塊多” の新発見作品を見に上田まで行ってきました。上田のホルモンはとても美味しかったです。
 
さて、前置きが長くなりました。今回の似顔絵の作者をご紹介しましょう。当院看護師の権守礼美です。小児担当の看護師ではちょっとした有名人ですが、このような画才があったとは知りませんでした。

我々小児心臓外科医は、常日頃から他人を応援するという変な癖が染みついています。手術を受ける赤ん坊はもちろんのこと、悩まれているお母さん、そして多少苦労している仲間たちに対して…。声には出さないけれども心の中でエールを送り続けています。このCOVID-19の時期、イラストには、一時ですが、逆に大きな元気を貰いました。
 
最後に、彼女が同様に描いた、小児循環器の医師達の似顔絵もお許しを得て掲載します。学位師匠も健在です。榊原記念病院ホームページの写真と比較して頂きたいと思います。
 
それでは、皆さん、“500例の小児心臓手術” の続きでまたお会いしましょう。