コラム
500例の小児心臓手術 その2〜500例の始まり〜
2002年だったと思います。榊原記念病院が府中へ移転する前、新宿京王プラザでの食事会が終わった時のことです(当時はスタッフのコミュニケーションを目的に食事会と称する飲み会を多く開いていました。当然院長のオゴリです)。東京女子医大の小児循環器講座の教授であった高尾篤良先生から突然話しかけられました(当院では顧問として外来をされていました)。当時は小生もイッパシの若手小児心臓外科医と自負していましたが、高尾先生は雲の上のそのまた上の存在、話しかけることも恐れ多い存在でした。それがなんと突然に、“高橋先生、君ね~、君は今、君だけでどれくらい手術しているの?”(何故か両手を広げてお話しされます)。
高橋先生と呼ばれたことにまずビックリ…。“最近ようやく年間300例を超えたところです”とお答えするだけで精いっぱい…後が続かない……。そうしましたら、 高尾先生いわく、“あっそう~、それじゃあ、府中に行ったら君だけで500例やりなさい! ”。
“? ? ?、 ハァ~?”(人間驚くと“えっ”と息を飲むまたは吸うものですが、この時はため息のように“ハァ~”と吐いてしまいました) 。
“じゃあね”とさっさと玄関へ向かう高尾先生、このオジさんは一体何を考えているんだろうと思ってしまいしました(高尾先生は既にお亡くなりになりました。小生にはこれが唯一の会話です)。と申しますのも、当時は手術数が最も多いご施設でもせいぜい年間500例、しかも外科医がたくさん居ての500例です。
このお言葉については深く考えることができませんでした。そうこうする内に府中への引っ越しが始まります。