コラム
500例の小児心臓手術 その1〜今こそ考えるべき心臓手術の本質〜
3月下旬のことです。世界がパンデミックともいえる状態になったこと、また、医療崩壊が発生していること、さらに、日本でも大都市東京では恐らく同様の事態となると予想されたこと、これらから当院の小児心臓外科では、緊急を要しない子どもの手術はCOVID-19が落ち着くまで延期する方針としました。これは、他のご施設での手術が困難となった場合に備え、手術をできるだけ多く引き受けるための準備のためでした。実際に、この2週間、心臓手術をストップしているご施設からの手術依頼が急に増加しており、我々心臓医療チームは、更に気合を入れなおしているところです。
最前線でCOVID-19と戦っている医療従事者の方々には大変申し訳なく、そして心苦しいのですが、現在も重症かつ緊急の心疾患の患者さんを多く治療している榊原記念病院では、ベッド数やスタッフ数を分散させて、通常の医療に並行してCOVID-19の患者さんを積極的に受けることはなかなか難しいと考えます。もちろん、東京がもしパンデミックとなれば、心臓治療を中断してCOVID-19治療を行う覚悟はありますが、現状では、最後の最後まで心臓病の患者さんを受け入れるという東京都の後方的支援病院として、また多摩地区の地域支援病院として、心臓の治療を存続させることが我々の重大な使命であると考えた次第です。
このようなCOVID-19禍の時代だからこそ、子どもの心臓手術のあり方、もしくは、今だから考えなければならない心臓手術の本質があると思うようになりました。次回から、そのあたりをお話していきたいと思います。題名は“500例の小児心臓手術”です。