63歳還暦オーバー医師 学位取得に挑戦する⑧〜第二回審査に向けて~
少し話が飛びますが、拙著、”榊原記念病院 低侵襲手術書” の英文化が決定致しました。この本を執筆していた時からの大いなる願望でしたので、決定の報を聞いた時はかなり満面の笑みではしゃいでしまいました(想像してください)。ただし、図表などの掲載許諾は著者自身が取得せねばなりません。また、英文は著者自身でチェックしなければならず、その正確性も著者の責任です。加えて印税などは全く、全くもって入ってきません(……?)。完成までには相当な時間がかかりそうです。現在も英文と格闘中です(外国語試験の時の辞書は文字が小さくさすがに使用していません)。
さて、Thesisの書き直しです。インカの野積みには絶対に近づかないようにしなければ…。Neues、Neues…クワバラクワバラ…、さぁどうしよう?
アイデアが浮かびました、整いました。今回の症例にはゴアテックス弁を使用していたのです。ゴアテックス弁はラステリ手術などにおいて肺動脈弁として使うものです。当院では1997年10月に初めて臨床応用を開始しました。今まで600人以上の患者さんに用いています。最小径が12mm、最大径は28mmであり、新生児にも適用できます。最も重要な特徴はWarfarinが要らないということです。したがって、子どもたちの運動や女性の妊娠出産という面で極めて大きな利点を有する人工弁といえます。手作りで折りたたんで作成することから、海外では ”ORIGAMI Technique” と呼ばれました。一方、その海外ですが、肺動脈弁には亡くなった方から頂く同種弁(Homograft)を用いることが多く、もちろんRoss手術においても同様であります。残念ですが日本ではおいそれと入手することができませんので、ゴアテックス弁はそれに代わる新たな弁として開発されたものです。逆に言えば、海外にはゴアテックス弁はありません。超ラッキー ”Neuesとして最適じゃん! じゃん…”
結局、新生児期・乳児期Ross手術に使用したゴアテックス弁に対する再手術に関して再検討を行い、日本における固有の問題とそれらの解決方法について考察し、それをNeuesとして追加してThesisを書き直しました。光が “ちょっと” 輝く自信作として、第二回の審査会へ送付しております(前回のことがありますので少し照度を落としました)。
次回は ”還暦外科医、最終公開審査で踏ん張るの巻” です。