Doctor Blog

コラム

文化 その十四 若手の生態⑦ 教育-4 相克

前回、若手を一人一人罠に嵌めるという、大変物騒なお話をいたしました。ただ、一人一人を相手にする場合に忘れてはいけないことがあります。
それは、人間として生活していく限り、人間にはどうしても反りが合わない人間というものが出てくるということ…、皆さまにもご経験がお有りではないかとお察しします。
合わない人は、突然に出てくることもあれば、暫くお付き合いしてから心変わりするように突然そう思うこともありますね。しかもまた、そんなのに限って性格も存在感も濃すぎるのでございまして…、ただただ大層難儀するのであります。

さてこの「合う・合わない」は前世の因縁か、それとも小生の生まれ持った星の巡環加減なのか、はたまた誰かしらのイタズラか、ハテさて…。
しかしながら考えてみますと、それは相手側も同じことでしょうね。同じく決められた星のもとで巡環しておりますから、相手の気持ちにも同様のモノが生まれているはずなのです。恐らくこちら側と同じように、「お仕事なんだから上手く合わせるのがプロ」、「もっと大人になりなさい」だなんて、誰かしらから強く諭されていることでしょう。
しかし兎にも角にも、小さな組織でお互いがそう思ってしまったらどうもこうもなりませんですね。やはり難儀なことでございます。
それでも、その合わない若手が他施設に移って、とんでもない仕事をして大成するなんて話はよくあることでして…、もちろん時節がそうさせたということはあるのでしょうが、それは単に本人の才能だけではなく、移った場所にある何かしらの磁場がそうさせたとも言えます。少なくとも自分の場所ではそうならなかったことだけは多少反省すべきでありましょう。
いやいや、違いますね…、上司として大いに反省すべきです。

若手は、教育という観点において決してド素人ではありません。
もちろん初めは若手という群れに入ります。しかし、群れを保とうとしているのではありません。その内に、というより思ったより早く、一人で歩くようになって、一人だけが似合う風情をひけらかしていくのです。ですから、才能が潰えるような環境からは容易に逃げ出します。それは当然のことです。
臨床教育においては、単に情報をばら撒くだけでは何も発展しません。知恵や常識を根付かせるための出来事や素材を個々に直に伝えることが肝要と考えます。しかも、「近頃の若いモンは…」だなんて、そのような感情だけが浮き沈みしている環境では、もはや上司と若手が「合う」はずもなく、ましてや医療者としての緩和心は育ちませんし、患者さんや親御さんの心もまた治せるはずがないのです。それは九星で相生・相克を占うはるか以前の問題であります。
学問や組織、安全管理を優先するがために…、はっきり申せば管理一点張りと功名心を第一義とするが故に、臨床にあるべき思想や教育が音を立てて旧態化していく、そのような奇現症(現象)だけは避けねばなりません。

手術の組織内というものは普通…、というか殆どにおいて、
幸運にも九星的に合わない人間ばかり揃っているはずはありません。つまり、相生の誰かが必ずどこかで繋がっている訳で、その誰かが中継点の役割をしてくれます。
そして恐らく天は、精神が正常を超えてしまう我々手術人をお見捨てになることは絶対にありません。
ですから、後は上司として、ただただ皆を退屈させないよう、面白味の鮮度を高くするように自身を保てばいいだけのことです。手術人というお仕事はお愉しみが無ければお終いでもございますからね…。擬態でも宜しいですからしっかりと面白さを纏っておきましょう。

さてそういう処でそうこうしておりますと、経験上若手は、感受性があろうが無かろうが、手術の裏側にある人間的な美をあざとくも器用に観察するようになるのであります。
それを例えて言えば、自身の何やらあれこれを手術の中に押し込んで、その変化と慣性をこれまた何やらあれこれして見つめ直すということ…、ベタな話、それがとりも直さず、手術人的な相克の解決であります。人間関係が上手くいく施設とはそういうものでありましょう。

教育の場として在るべきは、最初の約数を探すが如き極めてシンプルな緩和心、つまり、パーセントで表せば1パーセントもいかなくていい程度の上司の懐いだけです。それは、新たな技量や術といった文明を探ろうとするようなアザとさではありません。元来そこにある文化を如何に守るのかという矜持であります。
この馬鹿馬鹿しいほどに平凡な懐いさえ守っていれば、若手はもう少し雨宿りしたいと思うようになってきて、何かしらのご縁を背負いながら次へと進化すると思うのですが…如何なもんでしょう。
組織は仕事をするためのものですが、そこで流れる仕事と皆の心の中に、組織立った考えは必要ないのです。そういうことを信じてきて、幾許かはその恩恵を被った小生であるから、敢えて申す次第です。

続きます。

「確がにおめんどは立技も寝技も出来ね若輩ものさ。いづまでも何がイズイズど考えでら。だばってあまり心配は要ね。考えでもみろよ。少なぐどもおめ自身、小学校の時よりはおがってら、間違い無ぇごどだびょん。成長そう考えぃば気楽になるびょん。でもまあ暫ぐの間はわんどにに甘えでいんだぜ。何のだめにわんどがこごさいるが分がるが? 人間の心の脱落防ぐどいう永劫昔がらの務めなのさ。
ふととすての生ぎ方の傑作ど思わぃるようにけっぱってみな。そうすればそうなるのが人生だ。思わねば絶対にありえね。そのだめにこの小路もまだ在らねばなね。そう思うばってな…。さでそろそろ飲みにえぐべが」