おもたせ 第一幕
読者の皆さま、おはようございます。
師走の足音がこそこそと大きくなる今日この頃、如何お過ごしでらっしゃいますか。お風邪など召されないよう隙間風には十分にお気をつけ下さい。
さて、その師走でありますが、初雪の報が段々と南下するにつけ、駆けずり廻るのは“坊さま”だけではありません。外科医もまたそうなのでございます。そんな時、決まって想像するのは、坊さまVS外科医の4X100mリレー…、
いやはや、のっけから大変失礼いたしました。そんな妄想は小生だけでありましょうね。でもまあ確かに、どちらも逃げ足だけは速そうに思えてしまうのであります。
師走とは…、
一年の反省を踏まえて自分を見つめ直し、そして、来たる新年の抱負を言霊とする時節でございます。
心を空っぽにするとまでは言いませんが、今まで持っていたものを一旦棚の最上段に上げ…、そして、道理があろうが無かろうが、思いっきりの余所行き顔で物思いに耽る…、そんなことができる“ひと月”なのです。
そうですね、鉄板に思うことはやはり、まずチームとしての変化、そして個人の変化でありましょうか。
もちろん、外科チームの是非は成績と手術そのものの質にとって問われるもの、ですから、かなりシビアな指摘も多く出てきましょうね。でも落ち込む必要はありません。それは当然のことですし、しかも、ある程度は数字で括ることができますので、むしろ、次の目標が眼に見えてはっきりしてくるのです。
一方で、これまた常に、自分に対して思うこと、
それは、いざ人間としての成長、そして心の成長の有無…。しかしこれらは、改めて面と向かって問われれば、ことさらに申すことが少なくなってしまいます。医療者としては当たり前に獲得すべきことでありますが、多分に評価と表現が難しい…。でもだからこそ逆に、もし自分に成長が無いと実感するのであれば、誰かしらが不愉快な思いを抱いたということなのでございましょうね。何かが足りなかったのであります。
そうですね、師走という時分の手術室は、チームとしても、個人としても、多少のウキウキ感を持ちつつ、何やら慌ただしい雰囲気をさらけ出してしまうのでございます。
小生にとっての師走とはこのように…、自分はどう変化し得たのか、そして若手をどう変化させ得たのか、常々の命題を懲りずに考えるのであります。しかしそれ以上に重要なのは、医療者には絶対に変わってはいけないものが在るということ、ですから、変わるべきではなかったことについても思いを馳せる…、とても大事なことだと思います。小児心臓外科は、不完全なものに完全を求める商売、そして、あくまでも人の手と心でやるもの、だからこそ、毎度まいど、心の底に溜まったものを敢えて歳極に掘り起こし、そして考え直すのです。
でもまあ、このあたりは外科医の職業病といいますか、習い性というもの…、
自分をプロデューサーと見るか、それともアクターとして見るのか…、ただそれだけで、馳せる思いの内容も、実際に走る距離も相当に変わってしまうのです。
「どうせまた、御神酒の量がポジティブ&ネガティブな気分で変化してしまうだけだから」、
そんなことを心ともなく思ってしまうものですから、「今は深く考えずとも良かろう」などとついつい逃避してしまう…、これもまたいつもの師走なのであります。
続きます。