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コラム

教える その四

「膝を打つ」、そんな時は心して、大腿四頭筋のことを考えてしまいます。…そんな体の式のお話です。

さてさて、
外科教育に利便さを追求する…、いいことです。がしかし、それによってもたらされる便益の多くは、人間の関係性を生みにくい…。
このこと、どこかで申した気もしますが、我々ロートルは未だ、青臭い感情に浸れる時代を生きております。実に幸せなことです。

でもまあ確かに、
「一つ一つのことを喜べる」、「一つ一つのことに価値を見出せる」、そのように、それぞれの一つ一つで「唯一の人になれる」こと、これこそが烏滸がましくも、小児心臓外科医の特恵であります。
ですから、望まずとも、そして、例えそれが観念的な意味合いを持ったとしても、
昔という、何かしらの景色の色に「容易に染まってしまう」…、そんな意味深な言い伝えもまた、じわじわと過去の時代からはみ出してくるのでございます。
このこと、外科医教育もまた然りでございまして、今回は、そんな「あるある噺し」の第一話です。

でも、さすがに昨今では、「色に染まる」なんて、あまり口にしないですよね。どうしても、感化や妄信などといった、「恩に着せまくる」という意味合いが強くなってしまいます。(もちろん、昭和の歌謡曲の中では、お酒や煙草とともに、華々しく異彩を放つセリフでありますが…)
しかしながら、例え、ある色に染め上げられてしまったとしても、
それでもなお、「やや濃い目の色合いの新たな自分」を醸すことができるのであれば、
それは、染めた何某よりは優れた進化を遂げたということ…、染めた何某のお方もまた、“染冥利”と感じてくれるのではないでしょうか。
そして、そんな時にこそ、でございますね。
誇らしくも、「創造性・オリジナリティ・専売特許・お家芸・十八番・取り柄」などのお言葉たちが自然に生まれてくるのは…。(もちろん、そんな奇特な「染め冥利人」は、そうそういないのでありますが…)

でも、何やかんや申しましても…歴史的には、
この人の色だけには絶対に「染まりたくない」、そう念じてしまいたくなるようなお方が、世の習い的(あるある)に、存在(在る在る)するのでございます。しかもハタ迷惑に、本人自身が「染めたい」オーラを見境なく発するものですから、話はさらにややこしくなるのです。
でもそういえば、そんな「あるある」、昨今では画時代的に珍しい存在ともなりまして、最近トント見ませんですね。
思い起こせば、そんなお方の「染め倫理」というもの…、取り合えず何でもトッピングして、その盛りの高さを自慢するという「お好み焼き」的なもの…、愛嬌にもならないその仕草だけに、寂しささえ漂うのです。
少しだけ正直な感想を申しますが…、
恐らくはただ単に…、そんなお方に在るのは、あの混沌とした南と北の没美学のみ…、
残念ながら、かの雅な優雅さ、すなわち、人間はどう行動すれば美しいのかという感性を、運悪くも、教えて貰えなかっただけなのでありましょう。
ですから、百歩だけ譲りまして、そうそう非難することはできません。もしかしたら、そんな落胆的存在にさせたのは、教えることをしなかったこちら側にも責任があると考えるべきかと…、ですから少しだけ教えて上げればいいのです。

そうですね、あれから、かれこれ600年が過ぎました。
もうそろそろ、21世紀に生きるべく日本人の真骨頂、「あるあるの美意識」を思い出す頃合いかもしれません。
特に、外科医として最も大切にすべきこと、それは…、知識や技術はもちろんですが、美意識までもが欠如していると思われたら、そこでお終いということ、
ですから、教育とは、いや「教える」とは…、「染める」のではなく、心を「設えさせる」ことだと思うのです。

それでは皆さま、本稿のお開きに、超心理学的ではありますが、小生の研究から最終的な結論をお示しします。
それは、「染めたいパワー」の防御策(昔々のことでした。実を申しますと、もう少しで染まってしまうところだったのです。危ないところでした)、以下の数字は科学的かつ霊的な信憑性をもって、証明されたのであります。
「絶対条件として、机の間隔が175cm以上離れていること、かつ、机の中心、すなわち着席しての会話間隔が333cm以上を保っていること、そして、できればの安全策として、1.128平方メートル以上のデスク・パーテーションでの遮蔽、さらに、できますればの神頼み、自分の机の裏には深大寺の御札を貼っておく…」、そんな具合です。
これらの条件であれば、例え「染めたいパワー」が目出度く吹き荒れようとも、染まることはまず無いといっていい…、
ただですね、そのパワーを侮ってはいけません。一つでも欠けるようであれば…、例えば1cmでも距離が縮まるのであれば、その安全神話は崩れるのです。お気をつけ下さい。

それにしても…、染めたいと考えるお方の、「染める色」とはいったい何色なのでしょうか…?むしろその方が気になって仕方ありません。もちろん色々と想像できますが、いずれ証明してみせましょう。

続きます。