京王線の旅 2つの内のその一
読者の皆さま、今週は、「高橋幸宏・生誕67周年記念《無性に安心》向春特別強化週間」でございます。
そこら中にエア充の気配が蔓延しておりますが、如何お過ごしでいらっしゃいますでしょうか?
つい最近のことではありますが、無下に無駄なることをツラツラと考えながら、調布のいつもの美容室へ向かうある日のことでございました。その日は弟子どもの手術が無かったとはいえ、その朝偶然にも午後2時の予約が取れたのであります。
13時37分の飛田給発各駅停車に乗ろうと病院を出発した小生、見上げますと、お空にはこれ以上ないというくらいのドンヨリ雲が…、
まあそれでも「そこに山があるから登る」という妄想登山家の見事なる健脚は今も健在でございまして、何と27分発の電車に間に合ったのでありました。
ところが、そんな時に限って、千歳烏山駅手前にて事故発生のテロップが…、あ~あ…、
と思いきや、幸運にも、3分遅れだけで上り電車が入ってきたのであります。
お昼の電車、中々に空いておりまして、調布まで約3分の電車旅、バックパックから文庫本を出して、ドアすぐ横の席に座ります。
そうこうするうちに西調布から調布駅へのトンネルに突入する勾配感が…、さてそろそろか。
「?…?」
「あららっ…」
その辺りとこの辺り…、少しだけ記憶が飛んでおりまして、気がついた時には、電車は調布駅を既に発車していたのでありました。どうも、青山さんの「ただいま神さま当番」の一番、その序文に聴覚を失っていたようです。
「まあいいか、今日は7分も得しているし、こんなこともあるべやな」、そんな時、ロートル外科医は決して慌てないのです。
このままつつじヶ丘まで行って、快速で引き返すか、それとも、布田で降りて各駅停車を待つべきか、さてさて…。
ここは持ち前の小児心臓外科医の即々判断、電車が多少遅れていることを見越して、後者を選択したのであります。
そうしましたら、何と何と、思惑通りに4分後に到着とのアナウンスが。
昼間の布田駅、殆ど乗客がいません。そう言えばこの区間が地下に潜ったのはいつのことだったっけ…。
再度文庫本を取り出しますと、一本前の京王八王子行きの特急が静かに目の前を通り過ぎていきます。
次のページまでと決めて序文に再度目を通します。
「あらっ」
ふと気づきますと、小生が乗るはずの高尾山口行きの各駅停車が目の前をゆるりと通過しています。
「何で…?」
8両編成…、小生が待っていた調布寄り前方ホームには止まらないのでありました。しかも、このあたかも人跡未踏の洞窟のような布田駅地下構内、左右の事故防止フェンスが閉まってしまいますと、都会人になっちまった小児心臓外科医には圧迫感を感じるくらいに静かなのです。もちろん8両編成では、調布寄りのフェンスは開きません。
マスクの中でポカンと口を開ける某小児心臓外科医、そして、最後尾の窓から顔を出して憐れみの流し目を送る車掌さん…、どうやら今度は五感すべてを失っていたようです。
そんな絵面には、何かを振り切った爽快感が確かにありました。でも、何かが振り切れた危険な爺い感もそこにありまして…、今思えば実に新たな感慨にふけったのでございました。
結果、「木にも登る」外科医は、約15分遅れで調布駅に到チャコ、美容室には予約時間ビッタしと相成った次第であります。めでたし目出度し…。
(今回の乗り過ごし事件、全てはコチトラに非があり、別に文句を言う訳ではございませんが、最近、京王線では停止位置直しが多いように見受けられます。そして、これもまた決してクレームではございませんが、直しがなくても停車位置を外すことが多くなっているようにも思えます。)
続きます。(皆さま、どうかご安心下さい。今回は2話しかございません。次回が最終話です。)