繋がる 繋げる その四 思い出
読者の皆さま、明けましておめでとうございます。
新年のご挨拶を兼ねまして、今年を大胆に予言してみようかと思ったのですが、運命というものは自分で作るもの、ですから、どうぞご自由に、ご自分の責任にて盛りまくって頂ければと思います。
今年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
さて新年早々ではございますが、繋がるに続いて『繋げる』、つまり、「横々」から「縦々」のお話に移りましょう。皆さまの長~い溜め息が聞こえてきそうでありますが…。
つい最近までの講演テーマは、「前もって知るべきことは前もって知る」でありました。
講演では、今現在の小生が一番オモロイと思うことを練りに練って構成するようにしておりまして…、自分が飽きるまでは、尾鰭足ヒレ付きまくらせながら、長~く、引っ張らさせて頂いております。
ですから、その間に中学校や高校の生徒さんへの講演がありましても、医学生や現役の医療従事者、一般の方々とほぼ同じ内容を喋る訳でございまして、
従って中にはたまに、「学生にはもっと相応しい話があるだろう」、「もっと子どもたちが望む話をしたらどうだ」などと、手厳しいご指摘を頂くこともございますものですから、これまた多少の混乱を招くこともあるのです。
でもですね、それよりも何よりも、こちらが今最も大切と思う考えをぶつけて、「アンタラどう思う」なんて尋ねる方がよっぽど盛り上がることは事実です。
実際、中高生からの物怖じしないご質問は、大人の方々よりもよっぽど核心をついたものが多い。まあ若さっちゃあそんなものなんでしょうね、子どもたちが今納得できることを上から目線で語っても、それじゃあ本人たちは詰まらない、誰もが分かることなんてあまり意味が無いんじゃないかと、いつも通りではありますが、懲りずにそんな言い訳をしているのでございます…。
もちろんもしかしたら、その時には理解できないこともあるやもしれません。でも、難しいことはいずれ易しくなります…。そして、将来、「あの時の話はこれだったか」と思い出すことがあれば、より印象的となるのではないかと…。
子どもたちの心はこちらが追いつけないスピードでどんどん新しく変わっていきます。一年後にどうなっているかも分かりません…、その点、自分の背中を名残り惜しそうに撫でている大人たちとは違うのです。
ですから前もって知るべきことは、その善し悪しも可不可もさておいて、「前もって聞いた方がいい」…。
もちろん、喋る内容をその都度吟味し、その都度オモロくすること、それは提供する側の最低限の責務でございます。
でもまあそうですね、そう考えますと、講演というものは、話す方も聞く方も、一種の「思い出作り」と言えるのでしょうね。そしてその思い出は、いつかまた、蘇ってくるのです。
もちろんたまには、複雑な経路を辿ることもあるでしょう。しかし、初めて聞いた事柄を、その時の映像とともに心に残すことができれば、
その思い出では、あたかも自分で経験したかのように役立つということ。
そして、その思い出の内容が現実として目の前に現れることがあれば、それはさらに進化した新しい思い出となって、また次の人に「繋げる」ことができるということ。
人は自分の経験で育っていく、申すまでもなく、そんなことは重々承知しております…。
しかし、思い出(+映像)を持っておくことで、少なくとも、それを喋った某小児心臓外科医よりは早めに大人になるであろうこと、これは間違いないと思います。そこにフェイス・トゥ・フェイス講演の大きな意味があるのです。
(最近つくづく思います…、医学生および若手外科医の皆さん、もうチッとまともな質問をセンかい! 中高生に負けとるで…)
先日の講演で勇気を出して質問してくれた生徒さんたち、その後、如何お過ごしでしょう?
「もし貴女が悩みや緊張も無い完全な人間なら、恐らく…、喜びも愉しみもまた、初めから貴女には無いということになります。そして、悩みや緊張から開放された時の、もっともっと大きな喜びも経験できないということにもなります。ですから今はそのままでいいのでは…、そう思いますが如何でしょう。」
「そうですね…、人生で絶対にあると思うことは…、その内に、遠くを見渡せることのできる背の高い人が話しかけてきて、どちらを選ぶべきかアドバイスくれるんじゃないでしょうか。そして必ずやまた、足元を照らしてくれる背の低い人も現れるんじゃないでしょうか。ですから今はそのままでいいのでは…、そう思いますが如何でしょう。」
「そうですね、この齢になって思いますのは、医者をやり続けなければならない人ってそう多くないんです。最近の若者はナンタラカンタラって、偉そうにふんぞり返っている大人たちに、忘れていたものを思い出させてやるのが貴方たち高校生の役割でもありますよ、ですから今はそのままでいいのでは…、そう思いますが如何でしょう。」
次回、君たちがもう少し大人になったら、
「カレーライスに目玉焼きが載ってる」、そんな井の頭公園風のドラマチックな青春だけでなく、
「再来軒のラーメンは無理だが、高田饅頭だったら奢ってやる」というような、青春の葛藤ともいえる積極的な優しさについて、
そしてついでに、「我が身を犠牲にしてまで皆をリラックスさせるギャグの作り方」(できれば黄色い声援を浴びるような)もまた、こそっと伝授させて頂こうかと考えております。
でもまあ、「あの時の小生にあって、今のあなた達に無いものなんてないのですけれどもね」…、実に羨ましい限りです。
すべては合縁奇縁、そしてトレイントレイン、まあ適当に頑張って下さい。お元気で…。
続きます。