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コラム

オノマトペ その二

オノマトペは元々、五感による“ほのか”な感覚印象が、揉まれに揉まれてより強い感情を持ち、そして直接的に響き合うという機能を獲得した、現に誇らしくナウい言葉と考えます。従いまして、それをあえてクドクドと説明することはモチのロン野暮天というもの、これは当然のことでありましょう。
しかし一方で、“直接的”に響けば響くほど、聞く側としては“快or不快”という、それぞれに相反する感情も生まれることになります。このように、一つの感覚表現にそれこそ客観的ではない多種多様な感覚反応が必然的に生まれること、実に興味深いことであります。
がしかし、そうしますと、使う方にも、オノマトペをどこまで使っていいのかという遠慮感が生まれてきます。下手するとその発語により、オノマトペが持つ、響き合うという本来の意義とはかけ離れた、非常にサブイ職場環境へと突入してしまう可能性もあるのです。
オノマトペ熟練と言われるやや年喰った皆さんにも、このような顰蹙もののオノマトペの使用経験、多少なりともあるのではないでしょうか。従いまして、オノマトペ初心者はまずこの一点だけに注目して、清純際立つオノマトペの学習が必要となります。

さてそれでは、オノマトペの効能についてお話を進めましょう。
まずはマイナス面ですが、
「あいまいすぎて具体的な理論に欠け、初めて効く人には細かな意図が伝わりにくい、感覚や感情だけの行動になりがちでミスを誘発する、また、発音が幼稚で子供っぽい」、などなど。
オノマトペ信奉者の小生にとりましては実にサンザンな言われようですが、まあ確かに「にゃー」は論外中の論外、とても全国区にはならないとゴメンナサイしてしまいます。

一方、源泉かけ流しの如く得したなと思うプラス面は、当然それらの逆、
「複雑そして微妙な内容を簡潔に表現できる、イメージさせやすい、オノマトペを唱えることで集中力が増す、リラックスできる、ネガティブにならない、成功のイメージが掴める」、などなど。
確かにスポーツの世界におきましては、もちろん運動理論の習得も十分に必要ではありますが、運動のコツを伝える一手段として、オノマトペの意図的な使用が運動パフォーマンスを向上させること、間違いないようです。
「後はバァッといってガーンと打つんだ」、これだけで多くの若手選手を育てたのは、そう、あの読売巨人軍の長嶋茂雄終身名誉監督です。もちろんそこには、それに答えた若手の感覚力とフトコロ力、加えてその後の並外れた努力があったのでしょう。でもそれにしても、実に素晴らしい以心伝心なのであります。
でもそのように考えますと、スポーツにおいても、お互いに相手を察するという、極めて“ぴゅあなちゅらる”な心持ちが必要な訳でして、これこそがまさしく前回ブログの“奈良的阿吽の呼吸”に違いないと、読者の皆さんをまたもや無理くりに我田引水、誘導してしまうのであります。
長嶋監督のオノマトペにはむしろ単純に、上司と若手の常日頃のコミュニケーションとしてとても大きな意味があったのでしょう。

さてさてそうやって流されて流しながら考えて参りますと、もちろん手術の世界においても学問的な難しい理論は必要であります。でもしかし、理論だけで“手が動く”ようになるかっていうと絶対にそんなことはありません。
心臓手術がチーム医療と言われる限り、そして、手術時間の短縮こそが子どもの手術での唯一の低侵襲化対策と言われる限り、それらを向上させる“いわゆるひとつのオノマトペ”、極めて重大な意味を持つのではないかと、またまた次回のお話へと一人よがりに誘導してしまうのです。
 
続きます。

題名「手術開始前の阿吽的オノマトペ交換の儀」

※小生が小学校のころのある漫画雑誌で、“巨人軍選手にお手紙書いてサインを貰おう”、なんてコーナーがございました。当時人気の4選手に送ったのですが、なんとなんと長嶋選手から宮崎の田舎にサインが届き大喜びした記憶があります。