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コラム

インカの野積み崩し②「対義語 最終稿その一」

「密と蜜」、漢字変換に苦労しております。

 

さてさて、「密」のお話です。

 

心臓手術はチーム医療の最たるものであります。

でも考えてみますと、チーム医療ということは人が寄り集まるということ、

それはまさに、密室の中の密中の密となります。ソーシャルディスタンスどころの話ではありません。

“密はいけません、でも密で頑張りなさい”、…実に見事な「対義語」です。

 

特に小さな赤ん坊の心臓手術では、むくつけき男どもが3つの頭をくっつけ合いながら、小さないちご大の心臓を凝視することになります。

そうすると、手術用の帽子やガウン、屈強なサージカルマスクを装着していても、お互いの間の感染機会は極めて高いと考えなければなりません。

 

実際に若手は、前日にニンニク入りのスタミナラーメンでも食おうものなら、執刀医からレッドカードが出て、即一発退場となります。

手術室は、それだけ密な空間なのであります

(もちろん若手外科医は手術後に、徹夜に近い術後管理が待っているのですから、日頃から胆力と精力を付けておかなければならないことは重々承知しています…)。

 

“息をするな”、もちろん、そんなことはできません。

でも、対策はいろいろと考えなければなりません。

例えば、サージカルマスクの二枚重ね、もしくはN95という感染用の特殊マスクの使用などなど。

実際に試しました…

息が苦しく少し意識が遠のきます……。酸素吸入が必要です。

 

さてさて、どうしましょう。

そこはやはり、特にこの時期、“500例の小児心臓手術”の出番でしょう(本ブログ参照)。

説明しなくても意思疎通ができ、指示しなくても充分に機能する手術室が必要です。

そして何よりも、早く手術を終わらせることが重要なのです。(密は必須、でも密の時間短縮はより必須)

 

当院に見学に来られる多くの方々から頂いた言葉、“ここの手術室は静かだね、阿吽の呼吸だね”。

しかし、当時、阿吽の呼吸とは、ただ言わなくて済むことを言わないだけという、極めて単純な「対義語」であると、外科医的に性格ひねまくり状態の解釈をしていましたので、それがかなりの誉め言葉だと分かるまで一年くらいかかりました。

 

最終稿、もう少し、続きます。

密です。