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コラム

63歳還暦オーバー医師 学位取得に挑戦する④~Neuesを求めてインカの野積みを探索する!~

お断り
現在、東京だけでなく、全国でCOVID-19の蔓延が危惧されています。このような状況でブログを展開していくことはあまり良いことでないと考え、「還暦オーバー医師 学位取得に挑戦する」の連載は、しばらくご遠慮しようと思っていました。

 

しかし、全くの突然に、そして偶然にですが、約数名のフォロワーの皆さまから、”こういう時だからこそ続けてくれ”という心のこもったリクエストを頂きました。僭越ですが再開することに致します。相も変わらずふざけた文章ですが、少しでも楽しんで頂ければと思います。約数人のフォロワーの皆さん、ありがとうございました。この時期、私もなぜか元気が出ました。

 

では本題へ

さて、前回の「63歳還暦オーバー医師 学位取得に挑戦する③」でお話ししたように、見事に、それはそれは見事に外国語試験に合格しました。一気にTOEICの点数が上がった気がします。しかし、浮かれている暇はありません(実は相当浮かれていました…)。次には学位論文の核となるべき主論文を作成しなければなりません。この論文が査読制度のある一流医療雑誌に掲載されることも、学位取得のための二つめの絶対必須条件なのです。これが小生にとりましてはまたまた最大の難関であります。

 

主論文の作成に関しては学位の先輩である、当院小児科の”雄”、もしくは”知識の番人”との異名を持つ浜道裕二先生に相談しました(今では師匠と呼んでいます)。その師匠いわく、
”学位にはneues(ノイエス)が必要だ! 高橋には何かあるのか?”

 

はてはて”Neues”とは何ぞや? 医師にあるまじき知識の無さを反省しながら、どうやら、”新しき事“という意味を示すドイツ語らしいと判明したのは、師匠のお言葉の3日後でした。つまり、学位取得には今まで報告もしくは発表されていない新たな知見が必要とのこと。さてさて、自分には何があるのだろう。やはりこれは最大の試練であります。

 

前述しましたが、何しろ”飽きやすさ”という才能では天下一品の外科医です。まあそれでも今まで多少の新しきことはやってきたと自負していますので、20年ほど前の当時は新しい研究であった、無輸血開心術やゴアテックス弁でのデータを求めて、”インカの野積み”と称される小生の机の探索を開始しました。

しかし、いくら掘り返してみても、それらはやはり当時のみに新しきことにあったに過ぎず、”嫌な性格の外科医” の片鱗が垣間見えるものばかりしか発掘されません。野積みに残されたデータは、すべて中途半端で散逸しまくっている状態でした…。

 

少し脱線しますが、こういうゾッとするような苦難が手術中に発生した場合、何とかして新たな道筋をつけて解決するのが外科医の習性です。

”結構そういうことは得意かとです”。”そういう時は普通に何故か頑張れるとです”(ヒロシ風に読んでください)。

 

でも、この時は何も考えず、外科医のプライドをかなぐり捨てて、易に走りまくってしまいました(本来ならば、”易に付く”とか” 易に流れる” という言葉を使うのではないかと、当院の広報担当者がうるさく突っ込んでくるのですが、小児心臓外科医が ”易に走る” と表現することは天照大神の御代からの決まりごとなのです! ではないかと思います…)。

 

最終的に選んだ題材は、”新生児期・乳児期のRoss手術”です。めったにやる手術ではないので、検索すべき症例数が少なくて済みそうだと考えたことが最大の理由ですが、日本では今まで、この時期のRoss手術に関する総合的検討が無かったことが ”Neues”となるのではないかと、極めて真剣に(やはり少し安易に)考えてしまいました。

 

さて、次回は、そのRoss手術について、そして、主論文の作成について話を進めましょう。

 

 

桜は散りましたが、榊原の庭は変わらず華やかです。