著作『榊原記念病院 低侵襲手術書』について
6月に書き上げた私の本について少しお話したいと思います。完成まで約2年半かかりましたが、何とか上梓できました。
この本は、榊原記念病院における私の手術経験から、心臓外科医と手術室に関わる医療技術者に役立つ解説書として書き上げました。心臓外科医が技術を高めるためには、特に小児の心臓手術では、その正確性だけでなく、手術中と術後の管理において、いかに生体への負担が少ない流れを作ること、すなわち、総合的な低侵襲化対策を習得することが必要と考えています。そのためには、極めて基本的かつ直接的ではありますが、外科医個人のスキルだけでなく、手術チームの育成や手術の効率化にも目を向けなければなりません。体外循環と低侵襲化、pitfall、時間の短縮と手術チームの育成など、医療チームに関わるスタッフにぜひ知っていただきたいことを網羅的に解説しました。
一方で、医療に詳しくない方にもできるだけ広く手に取っていただくようにもしています。随所にちりばめたコラムやQ&Aは、小児心臓手術に対する疑問の歴史ともいえるもので、一般の方にも興味をもって読んでもらえるのではないでしょうか。これまでに講演会などで手術を控えた親御さんや中高生(!)の方から頂いたご質問なども思い出して書いています。返答に困るご質問も多かったのですが、あえて当時お答えしたままの内容で書きました。ひんしゅくを買いそうな箇所もありますが、それはそれで面白く読んでいただければと思います。付録として、Webには私の手術映像や当時のエッセイなども掲載しております。
小児心臓手術は具体的にどのように行っているのか、医師は手術を行うときに何を考えるのか、さらに、チームの悩み、小児心臓手術における問題点や今後の希望など、多少難解な部分もありますが、少しだけ我慢して読んでいただければ、小児心臓手術とは何ぞや、ということが分かると思います。そういう意味では、医療従事者への本というより、むしろ、今から手術を受けられる子供を持つ親御さんへの本ともいえます。
宜しければぜひご一読いただき、ご意見をお聞かせください。